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ロバート・ハリスの「ポンペイの四日間」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

古代都市ポンペイが壊滅する前後の四日間を舞台にした物語。話は噴火二日前から始まり、大規模な火砕流が起きた噴火翌日までの四日間が舞台である。

噴火の兆候と見られる出来事が、ローマ時代に建造された最も偉大なものの一つ”水道”に起きる。硫黄の匂いとともに、断水が方々で起きる。これの対処を迫られるのが、主人公アッティリウスである。

対処の過程でアッティリウスが直面するのは、ある出来事とのつながりである。それは、前任者のエクソムニウスの失踪。

アッティリウスが今回の出来事の対処を迫られていく中で、エクソムニウスの失踪は、今回の出来事と結びついていく。

どうやら、エクソムニウスは二週間ほど前から今回の異変を感じ取っていたようなのである。そして、それとともに失踪している。だが何故?

そう思っていると、大富豪のアンプリアトゥスがアッティリウスに近づいてくる。アンプリアトゥスは開放奴隷の身分から成り上がった。

そのアンプリアトゥスが水道に絡む利権をちらつかせる。そこには前任者エクソムニウスの影がちらつく。この二人の関係は?そして、何故アンプリアトゥスはアッティリウスに近づくのか?

本書はこうしたミステリー要素が重要な物語の柱となっている。そして、登場人物。まさか、プリニウスを登場させるとは思わなかった。「博物誌」を記したことで有名な古代ローマ時代の著名な学者である。

最期に、冒頭著者の覚え書きのところで当時の時刻に関する事が書かれている。ローマ時代の一日は日の出とともに始まり、日没とともに終わっていた。つまり、”不定時法”を採用していたということなのだろうか。

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内容/あらすじ/ネタバレ

ヴェスヴィオ山の噴火二日前。

アウグスタ水道の管理官となったばかりのアッティリウス。部下となる現場監督のコラックスと折り合いが悪い。

というより、コラックスが一方的にアッティリウスを敵対視している。アウグスタ水道の前任管理官・エクソムニウスは二週間前に失踪したのだ。そこで急遽派遣されたのがアッティリウスだった。

それにしても、エクソムニウスは一体なぜ失踪したのか?

この日、アッティリウスらが調査している最中、町の大富豪アンプリアトゥスは奴隷を処刑しようとしていた。

それは池で飼っている高価な魚が全滅したためである。奴隷は水のせいだというが、そんなことはアンプリアトゥスにとってはどうでもいいことだった。

この様子を見ていたアンプリアトゥスの娘・コレリアは奴隷の言葉を信じ、アッティリウスを呼びにいく。乞われてアッティリウスが池の水を調べにいくと、硫黄の匂いが鼻についた。

アッティリウスは恐怖した。水道がすべて汚染されているのではないかと。かすかな希望として、汚染されているのはアンプリアトゥスの所だけであれというものだった。

アッティリウスはコラックスらとともにミセヌムの街の水道管を調べ始めた。残念なことに硫黄の匂いがする。とともに水量が極端に落ちていることに気がついた。アウグスタ水道が干上がったのだ。

そこで、アッティリウスが取った手段はミセヌムの海軍の水を止めることだった。かわりに、この水を市民へ供給する。だが、当然海軍からの反発が予想された。

ミセヌムの海軍の提督はプリニウスである。「博物誌」を記した博物学者でもある。その提督から呼び出しがあった。

それまでにアッティリウスが調べたところでは、アウグスタ水道を使用している街で水の止まっていない街があった。ポンペイである。すると、その分岐点となる場所から先のどこかで水道が破損しているに違いない。

このことをアッティリウスはプリニウスに説明した。そして、船の用意をしてもらいたいと願い出た。陸路で破損箇所を調べに行くと、恐らく二日間かかるだろう。

いったん海路でポンペイまで行き、そこから陸路でいけば一日でたどり着くはずである。プリニウスはアッティリウスの意見をくみ取り、船を貸し与えることにした。

ヴェスヴィオ山の噴火前日。

アッティリウスらはポンペイにたどり着いた。資材等を集め、調査に向かう準備をしていると、思わぬ人物に出会う。

それは、ミセヌムにいたはずの富豪・アンプリアトゥスがいたのである。アッティリウスはこのアンプリアトゥスから資材の提供を受けた。

この過程で、アンプリアトゥスは建造中の大浴場をアッティリウスにみせた。これが壮大な金を生み出すこともほのめかす。それとともに、アウグスタ水道に関するある提案を受けた。だが、アッティリウスはこれをはね除けた。

不思議なのは、失踪したエクソムニウスの足跡がここポンペイにあることである。というよりも、彼はここを拠点としていたらしい。だが、ポンペイからも姿を消している。一体なぜ?

アッティリウスが破損箇所として探し当てたのはヴェスヴィオ山の麓に近いところだった。修復工事に取りかかるが、破損の仕方は彼の見たことのないものだった。

地震ならば水道は崩れているはずだ。だが、今回のは破損は盛り上がっているのだ。そのため、水が行き場を失い、ミセヌムが断水したのだ。

だが、一体何の力が働いたのか?そう思っていたら、ヴェスヴィオ山の方角から雷鳴のような音が地面から鳴り響いた…

そして、ヴェスヴィオ山の噴火当日。

本書について

ロバート・ハリス
「ポンペイの四日間」
早川文庫 約445頁
1世紀 ローマ時代

目次

火星
水星
木星
金星

登場人物

マルクス・アッティリウス・プリムス…水道官
コラックス…部下・現場監督
ベッコ…部下・左官
ムーサ…部下・煉瓦工
ポリテス…部下・奴隷
コルウィヌス…部下・奴隷
ヌメリウス・ポピディウス・アンプリアトゥス…大富豪
コレリア…娘
プリニウス…提督・博物学者
ガイウス…プリニウスの甥
アレクシオン…秘書
マルクス・ホルコニウス…ポンペイの行政官
クイントゥス・ブリッティウス…ポンペイの行政官
ガイウス・クスピウス…ポンペイの造営官
ルキウス・ポピディウス…ポンペイの造営官
マッサウォ…門番
ティロ…水道係
アフリカヌス…売春宿の主人
ズミュリナ…娼婦
ブレビックス…元剣闘士
エクソムニウス…アッティリウスの前任者